ATD-X 先進技術実証機 を模型で解説する記事

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このページでは、ATD-X 先進技術実証機 (昔で言う心神)について、自分とこの1/72模型を使って外見から各部の機能やらなんやらを解説してみます。実証機の見た目を説明しつつ自分とこのガレージキットの出来具合を宣伝してやろうって魂胆ですよ。2015/10/10現在、9月に初飛行すると言いつつまだ飛んだ宣言がないので、やきもきしている人も多いでしょう。飛んでからやる気だったネタだけどもう出しちゃうよ。

*注:この記事を書いたのは2015年10月ですので、2016年に入って公開された情報は含まれていません。模型も2015年までに公開された情報から作ったものです。以前の公開時から2016年までに形状を変更した(部品を変えた)と思われる部位もあるのですが、あくまで以前の形状についての話になっています。

筆者はただのモデラーであり、航空機や軍事の専門家でもなんでもないのでそのつもりで読んで下さい。そもそもの情報が少ないですから間違いはあるはずですし、専門用語の使い方とかも誤ってるとこがあると思います(てかあった)が大目にみてね。あとなるべくPCで見てください、文章量多いです。

関連リンク
うちの1/72 先進技術実証機の作例(デスクトップ版) ←同じ窓で開きます
うちの1/72 先進技術実証機の作例(地上姿勢版) ←同じ窓で開きます
うちの1/72 先進技術実証機の製品仕様 ←同じ窓で開きます
海洋堂の「1/100 ATD-X 先進技術実証機」を分析する記事 ←同じ窓で開きます

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・大きさの比較
とりあえず大きさから。左写真はプラモ(アカデミーのやつ)のF-22Aとの比較です。全体が見えるように重ねてみましたが、大型機のF-22と比べてしまうと流石にかなり小さいです。同じ双発でもウェポンベイなどの戦闘用の装備を持たない実証機ではこんなに小さいわけですね。平面形は主翼後縁や水平尾翼の形状が異なりますが全体的な形状はよく似てると思います。主翼後縁の動翼はF-22は内と外で分けてますが実証機では一つなので、動翼の構成は異なります。

右写真、プラモ(ハセガワのやつ)のF-35Aとの比較、重ねると見えづらかったので並べました。単発でまぁまぁ小型なF-35が相手だと実証機もそこまで小さいってほどでもなく見えます。ただし、F-35は厚みがけっこうあるので機体全体の容積で見ると実証機はだいぶ小さいです。平面形は、水平尾翼と主翼はF-35に似てるかなと。つまるところF-22とF-35を足して3で割ったぐらいの感じだと思えば大体正解。

右写真では、F-22に搭載するAIM-120CとAIM-9Mのプラモ部品も置いてみました。本当は下側から見たほうがわかりやすいんですが、置いて撮影するのが難しいので却下。胴体が小さく主脚が流用品の実証機ではウェポンベイを設置するようなスペースはなく、無理やり頑張ってもAIM-9を2~4発積むのがやっとって感じ。

側面からは並べて撮影しづらい&画像加工すんのはメンドイので省きますが、大きさ(厚み)的には実証機のほうが小さいです。

この上の写真はクリックするとギャラリーモードになって連続してみられます(のはず)。文章で書いても読むのメンドイと思うので今回は写真の中に記入してみました。以下はもう少し詳しい説明です、流し読みでOK。

・1枚目。キャノピー&風防は基本T-4の流用で、コーティングの色は不明。首脚と主脚はF-1(T-2)のほぼ流用。

・2枚目。アクティブ式電子走査レーダー(AESAレーダー)と思われる部分です。このレーダーについて、今までこのサイトで「合成開口レーダー」という表現を使ってきたのですが、これは間違いでした。自分が「合成開口レーダー」の定義を誤解していたのが原因です、複数のAESAレーダーを移動しながら使う場合にそう呼ぶんだと思ってたんですが定義が全然違ってました。実際のモノは普通にF-2やF-22などの最近の軍用機に積んでるAESAレーダーで、より高機能になっているようです。レーダー・センサの類は構造や機能や使用目的などで呼称の定義がごちゃごちゃ変わるため、ミスなく正確にやろうと思うと本気で勉強しないといけません。そんなメンドイことしてませんのでミスりましたゴメンなさい…。他のページもしれっと修正しました。

・4枚目。排気口周りは完成時の実機画像が公開されていないため推定混じりです。ノズルの周りのリング状の部品は何なのか自分にはわかりませんが、写真やメーカーの説明図で常に付いているのでエンジンに備え付けのもののようです。
普通、エンジンを胴体に搭載する飛行機はエンジン径で胴体の大きさが決まるもんですが、本機は概略図みたいにエンジンの外周に物を付けるため、結果として寸法を損してると思う。もっとも、ステルス機は兵装を内装する都合から胴体はどうしても大きくなるので、尾部が太い→胴体太くなる、となってもあまり問題は無いのかもしれません。
模型では、ちゃんとエンジンの穴は奥まで開いているんですが、写真だと黒く潰れて見えません。

・6枚目。水平尾翼は昔の「RCS実機実大模型(黒いやつ)」と「飛行試験供試機(実機、ガンダム色のやつ)」とを見分けるポイントの一つ、端っこが切り落とされてたら昔の実大模型のほう。
インテークの下面と胴体中央とが繋がっているのが特徴の一つ、インテーク内部&この繋ぎ目にスリット等があって、隙間部分に入る気流を制御してんじゃないかと思うのですが、実機写真ではモザイクもあり確認不能。
下面の黒く塗ったレーダーは、存在は間違いないはずですが厳密な形状は不明。機首・両肩・下面のレーダーの情報をまとめて高度に処理する能力が技術的に本機で最も重要な部分だと思います。個人的にはステルスはともかく推力偏向パドルは単なる飾りだと思うのよ(怒られる…)。

・7枚目。言及されることが少ないみたいですが、アレスティングフックは付いてます。実機写真でもギリギリ確認できて、F-22みたいにカバーで覆われてるっぽい。一応書いておきますけど、アレスティングフックは空母艦載機の専用装備じゃないので、フックある→海自空母(゚∀゚)キタコレ!とか妄想してはいけません。

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モザイクについて
ガレージキットのイベント「ワンダーフェスティバル」でもお客さんとの話題に上がったので、実記画像公開時にモザイクがかかっていた部分について、自分の見解を書いてみます。

・両肩のレーダー
肩のレーダーは基本的にモザイクかかってましたが、TV映像ではギザギザが見えてるのにかかってない場面がありました(苦笑)。この部分、隠したいのはギザギザした輪郭形状ではなくって、レーダーの表面状態なんだと思います。メッシュ状かどうかとか、格子の大きさとかがわかると性能をある程度予想できるんじゃないかと。ステルス性を上げるギザギザは今更隠すほどのもんではないはず。

・首脚カバー(前半分)
“く”の字になってる首脚(前脚)カバーの上半分は、前からの写真ではモザイク有りで横からだと無しでした。はっきり見えないんですが、”く”の上側が下に飛び出してるように見えなくもない…。本来のカバーの上から何か薄い板状のものを貼ってるのかもしれませんが、そう見えてるだけの可能性も大です。この部分、モザイクの理由は「レーダー作動時に**メートル以内に近づくな」って感じの注意書きがあったんでないかと思っています。下面向きのレーダーがあるので、しゃがんで作業してても見える位置に書いたんでないかと。写真を見る限り同様な注意書きは機首自体には無いようです。

・首脚カバー(後半分)
確認できる画像が一つだけですが、閉じた状態の首脚カバー後半分(長方形)もモザイクかかってます。ここも上のと同じ注意書きが理由か、あるいは公開時にカバーを付けていなくて内部が見えるのを嫌ったかどっちかだと想像。

・インテーク内部
ここも正面からだとがっつりかかってます。真正面だとエンジンのファンが見えるはずなのでモザイクは当然。ファンが見えないアングルでもかかってるのは、インテーク内部の壁面に流量とか胴体との隙間にできる乱流を制御する為のスリット等があってそれを隠すためじゃないかと思います。

・組み立て中のコクピット内部
TV映像で、モザイクかかってる時もありました。計器板etcあるので、そりゃ隠すよねと。

・組み立て中のエンジン取り付け部分
エンジンが付く穴を中心に大きくモザイクがかかってました。このへんはパドルも付くので、無難に全部隠しとこうということかと。

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**実証機 あるもの・ないもの**
実証機の実機で、積んでいるものと積んでないものを書いてみます。本機はあくまで実験機なので戦闘機としての装備はいろいろ積んでません、積んでないものに挙げた装備を搭載しないと将来の戦闘機としては多分使えません、そしてそんなスペースは本機には無いよっていう趣旨の項目です。自分でも特に自信が無いものは”多分”としています、必ずしも積まなくてもOKなものは”無しで可”としました。順番は適当ね。

あくまで素人の見立てですのでそのつもりで!

積んでる  補足  積んでない 補足
 AESAレーダー多数  索敵航法とか  射撃管制装置一式
 射出座席  ウェポンベイ
 アレスティングフック  翼下/胴体ハードポイント(多分) 増槽くらい積めるかも
 データ収集etc用スパコン  ガン積み  スピードブレーキ(無しで可) ラダーが兼用する、F-22と一緒
 IFFとかのアンテナ  非ステルス形状  自衛用レーダー類(多分) お尻に付ける相手電波感知用のやつ
 最低限の灯火類  編隊灯 細長いアレ
 アフターバーナー  チャフ・フレア・曳航デコイなど
 推力偏向パドル  ガン(無しで可) 領空侵犯の警告用に欲しいかも
 IRST
 赤外線放出の抑制装置の類(多分) 無くてもいいけど欲しいよね
 戦術データリンクの類(多分) 試験品を積んでるかも
 空中受油装置
 対地攻撃能力一式 全く考慮してないので何も積んでない
 レーザーの類 積もうぜ

ざっとこんなもんでしょうか?
この中で能力としては射撃管制とデータリンクが重要で、戦闘機にするならそれらを積んでシステム全体のバグ取りするだけでも膨大な時間と費用がかかるはずです。レーダーとかシステムとか言っても、射撃管制・索敵・データリンク・自己防衛などなどを高度に統合運用できないといけないわけですから、非武装の実証機が飛んだところで戦闘機にはほど遠いんでない?と思ってます(怒られる)。F-2での実績があるとはいえ、将来の第6世代戦闘機は「自分で捕捉してなくても味方が捕捉した敵にミサイルぶっぱ可能」ぐらいの能力は必要だと思うので、第4世代のF-2の経験がどの程度役立つのかはちょっち疑問。

スペース的に実証機だと厳しいのはウェポンベイ。ステルス機なら機内へのAIM-120相当のミサイル搭載は必須ですが、んなスペースはないです、模型にしてみてよくわかりました。下面のフックを外して無理をしてもAIM-9系を2~4発がやっとって感じ。主脚庫の上はスペース的にも強度的にも無理だと思います。ステルス戦闘機にしたければ機体を拡大するしかないですが、それもう実証機とは別モノですやん。てことで本機をこのまま戦闘機にするのは無理だと思うのですよ、もっとも最初から実験機として作ったんだから当然なんですが。

ついでに目立たないけど重要だと思うのが空中受油装置とチャフ/フレアの類。空中受油装置は割とスペース食うので小型ステルス機では特に気を使うのではないかと思います。チャフ/フレアの類も将来はもっと進歩させたものになるでしょうから、そのへんの研究開発もいるんではないかと。現行機でもグリペンとか曳航式デコイ積んでますし、より進んだもの(囮無人機射出!とか)になってたりして。ステルスと機動で避けると言っても限度があるでしょうし、米の弾道ミサイル迎撃用機AL-1(中止されたけど)みたくレーザーでミサイル迎撃!とかできるようになったら胸アツなんですけどねぇ………ないか?……ないな。

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******ここからは暇をもてあました人だけどうぞ**********

**個人的な感想とか**
ここまでもほぼそうでしたが、ここから完全に自分の感想になります。お暇でしたらどうぞ。あと、怒らないでね。読んだ感想とかメールしてもらうのは歓迎ですが、どっかよそでボコるとかやめてね(汗)。

・今後、将来戦闘機どうなると思う?
ぶっちゃけ実証機の計画が始まった時点で、防衛省・防衛産業メーカーの間では「次は何がなんでも国産機」という事で話がついてると思います。「実証機の成果も踏まえつつ2018年までに方向性を決定」ってなことになってはいますが、国産はとっくに規定路線で実証機は飛びさえすれば試験結果は大して問題じゃないだろうと。内輪で一度決めた公共事業を変更することは滅多にないですから、試験結果に関係なく国産に持っていくでしょう。実証機は実際の将来戦闘機開発までの間、メーカーに仕事と資金を提供するための”つなぎ”としての役割があったんでないかと思います。

・今後、将来戦闘機どうするのがいいと思う?
個人的には国際共同開発が良いかと、次点がF-35の発展型、独自開発はダメ。共同開発は米日を中心にオーストラリア・カナダを加えて、状況次第でフィリピン・シンガポールも追加した環太平洋な感じで。EUは断られると思う、ベトナム・インドネシア・タイは情勢的にリスク高い、韓国は中国に傾きかねない、台湾は是非とも加えたいところですが実際厳しいでしょう。共同開発は実質同盟関係みたいなもんですし、中国対策としてこのへんの国々で共同戦線張っていかないといけないんでないの、と。大陸相手に独力でどうにかなるわけないじゃん。もっとも、実際問題としてF-35の導入を始めたばかりの状況で次世代機を考えようっていう計画に乗ってもらえるかは疑問ではありますし、法的な問題もありますから実現は国産するのと同じくらい難しいかもしれません。現実的なのはF-35の中身を発展させたものを従来型に追加で調達&装備済みの機体をアップデートして2050年くらいまで使うってとこかと。F-4だって魔改造してASM対応したぐらいだしF-35もやっちゃえばいいじゃん。

国産だけは無いって…コストと時間がいくらかかるのよ…。仮に実証機ベースで拡大した戦闘機を作って2018年に開始~15年で完成したとして、2033年になってF-22相当の国産戦闘機を配備しはじめたのではあまり意味なくないかい?どうせF-35導入してるんだし。かといって第5世代を大きく上回るものを開発できるとは思えないのですよ? てか20年後には国内経済も社会保障制度も製造業も相当減退してると思うのですよ?製造業で現状維持できるのって自動車関連ぐらいだと思う…そもそも人員が足りないってば…。不況と言われ続けたここ20年くらいの間、国内製造業を支えてきたのってTVが扱うような「日本独自の技術!」ではなくって、中小メーカーで働くお父さんやパートのお母さん達の地味な努力とサービス残業だと思うのです、そしてそれの維持は到底不可能…。借金大国で国産戦闘機作ってる場合じゃないってば。

脱線ついでなので書いてしまうと、実証機…というより”心神”に関して「○○ではこんなスゴイの作れない!」とか「○○の新型なんてチョロイ!」とかやたらと他国を下に見たがる連中は一体何なんだと。説教しても意味ない…むしろそもそもそういう層はこの文章読むことは無いと思うので、簡潔に一言だけ。
大学工学部の教授と会社のベテランエンジニアが同じこと言ってた、技術屋の格言です。
「金と時間と人間をいくら使ってもいいなら誰でも何でも作れる」
あとは自分で考えようね、と。まぁここ読んでくれてる方々は大丈夫なはず、意識高いです。

・実証機についての感情(ものすごーーく個人的な感情論です)
自分としては、実利を考えれば実証機の開発はすべきでなかったと思います。財政面と効率で行けば国産戦闘機はいらないだろと。一方で、いち飛行機ファンとして、戦闘機やその技術者に憧れて育った身としては、実証機のような機体が作られたことは嬉しく思います。
実証機は戦闘機開発の研究用であり、色々と試験をする目的があるわけですが、試験は飛んでればいいだけと思えばこの機体は”自由に飛ぶためだけの機体”ともとれるんではないかと思うのです。アクロバット専用機なんかも当てはまりますが、多くはレシプロ機ですしジェットのやつでここまで自由な飛行ができる(はず)の非実用機は無いでしょう。
実証機は実用型が作られる予定はありません。ただただ自由に飛び回って一生を終える、そのためだけに作られた飛行機、そんな機体という捉え方をしてもいいんではないかと思うのです。そんなのは滅多に作ることができません、今後はコスト的にもっと難しくなっていくでしょう。ですから「ただ自由に飛ぶ為だけの飛行機」を作った実績を残してほしいと思うのです。大戦時の堀越技師(零戦ほか)や土井技師(3式戦ほか)といった著名な技術者の方々にしてみても、一生に一度は全力で好き勝手に飛びまわれる飛行機を作ってみたかった、それを操縦して飛びたかったはずです、しかしそれが実現出来た人は一握りでしょう。「自分が作った機体で自由に飛びたい」というのは飛行機や車に限らず、エンジニアになる人間共通の感情だと思います、結局は”自分だけの機体のパイロット”になりたいってのが根っこにあるはず。
エンジンを積んだ本格的な飛行機でそれを出来たのは戦後しばらくまでで、今ではまず不可能ですし実証機では技術者が操縦する事はありえませんが、操縦は無理でも現代で出来る範囲で「ただ自由に飛ぶ為だけの飛行機」に最も近い機体を開発できたんじゃないかと思います。もちろん試験項目やらステルス形状を始めとした制約やら色々ありますが、営業やら利益やら納期やら必達性能やらをかなーり無視して高運動性を持ったジェット機を開発できたわけですから、エンジニアとしては通常ありえないレベルで恵まれた状況だったと思います。飛行機に限ればもう2度と無いような環境で、”エンジニアの夢”的なものを詰め込んだ機体を作れたんではないでしょうか。

そんな環境で生まれた先進技術実証機さん、どうか自由に飛びまわって無事に一生を終えて欲しいと思うのです。実際のところは国とか企業とかの思惑や利権が絡みまくった灰色の空かもしれません、引退後も広報用に都合良く利用されるでしょう、ネトウヨもサヨも好き勝手言っています、そんなしがらみ全部を振り切って、純然たるエンジニアの夢・かつての飛行機少年少女の夢だけを載せて飛びぬいてくれる事を心から祈っています。

以上、長々とした駄文に最後までお付き合い頂きありがとうございました。


日付

2015年10月10日

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