1/35  バレンタインMk.Ⅱ 歩兵戦車   タミヤ

1/35  バレンタインMk.Ⅱ 歩兵戦車   キット/タミヤ  北アフリカ1941~1942年時val_2<実車解説>(特に好きな戦車なのでいつもより長いです)
バレンタイン歩兵戦車は第2次大戦中のイギリスの戦車です。1940年夏から部隊配備が始まった戦車で、イギリス戦車では最多生産台数の7,300輌以上が作られました。表記は綴りが「Valentine」なので「ヴァレンタイン」のほうが良い気もしますが、プラモの表記に合わせてここでは「バレンタイン」にします。英国戦車に付けられる型式のAナンバーを持っておらず、「歩兵戦車Mk.Ⅲ Valentine」だけの呼称です。
性能的には重量17t 程と比較的小柄にもかかわらず車体砲塔ともに全周ほぼ60mmという重装甲で(ちなみにマチルダⅡが75mm)、主砲は2ポンド砲(砲口径40mm)で当時のドイツ戦車に対抗可能、速力は24km/hと遅いものの、体格の割に有力な戦車でした。
突貫工事で設計されたため、脚周りは巡行戦車Mk.Ⅰ&Ⅱから流用したものです。構造もある程度は踏襲していて、全体的に無理のない無難な設計となっています。欠点としては2ポンド砲に榴弾がないことで、これは2ポンド砲を装備した戦車に共通するものです。歩兵戦車なのになぜ榴弾の無い砲を選んだのかは謎、2ポンド砲の榴弾は戦争終盤になってやっと開発されています。

英国軍での戦歴は、1941年11月に北アフリカでのクルセイダー作戦に参加したのを皮切りに、イギリス軍戦車隊にとって一番厳しい時期をマチルダⅡらと支えました。主砲&装甲強化前のⅢ号Ⅳ号が相手なら十分戦えて、背が低くて主砲の俯角が-15°と大きい(普通は-5~-10程度)という特性は稜線射撃に向いており、整備性の良さと故障の少なさもあって、アフリカでの戦いに適した戦車でした。1942年の後半になるとドイツ戦車が長砲身型になったため能力不足となり、アメリカ製戦車の数も揃ってきたために補助的な役割に回されていきます。ノルマンディー以降は後方での使用に限られました。

イギリス軍での戦歴はそれほど華やかに見えないバレンタインが7,000輌以上も作られた理由がソヴィエトへの武器援助です。1941年末から送られたバレンタインはソ軍から歓迎され1944年末頃まで前線で活躍しました。ソ軍戦車が足りていない期間は機甲師団の一翼を担い、T-34などが増えた後は歩兵の直協支援で活躍しています。1944年後半の攻勢局面でさえ、目標都市への戦車一番乗りを果たすなどの働きを見せています。

戦闘能力ではT-34や長砲身のⅣ号に大きく劣る本車でしたが、「機械的信頼性の高さ」「整備のし易さ」「視界や無線などの使い勝手の部分」「軽いので雪上でもよく動く、橋も平気」といった点が前線で高く評価され、実戦での実績で見れば「援助戦車の中で最優秀」とも言われています。
ソ軍現場部隊でのバレンタイン人気は異常なほどで「雪で動けなくなるマチルダよりバレンタインを寄越せ」という要求どころか、イギリスが援助をクロムウェルに切り替えようとした時にすら「それよりバレンタインをもっと寄越せ」と言っていたほど。自国での改造型の生産も計画されましたが、それは流石に流れています。

後世のミリオタが戦車をスペックや華々しいエピソードだけで見てしまうとわかりにくい事ですが、兵器というものはカタログの数値だけで評価できるものではありません。バレンタインの最大の長所は数字に出にくいけれども実際に使う人間にとては一番重要な部分だったわけで、特に過酷な戦場だった東部戦線で顕著でした。
また、WW2の戦場では戦車というのはそう多いものでは無く、特にドイツ軍戦車はそうそう遭遇するものではありませんでした。敵の戦車がゼロか1輌でも居るかで大きく違ってきますから、居るだけでも助かったわけです。ドイツ軍から見れば「やたら居る、そこそこ装甲が厚くて、側面取られたらこっちがやられる戦車」は厄介な存在で、ソ軍にとっては「確実に動いてくれて、維持に手がかからず、歩兵部隊の援護にも回してやれる戦車」は便利な存在でした。
T-34ら主力の数が揃ってからも、歩兵部隊にとっては滅多に見ない機甲師団よりも側に居てくれるバレンタインのほうが頼もしかったようです。

バレンタインは特に「強い戦車」ではありませんでしたが「優秀な兵器」であったことは間違いないでしょう。華やかさは無くとも地道に前線を支え続け、生産や維持にかかる負担の少なさで他兵器にキャパを譲り、「戦闘」ではなく「戦争」に勝利するために大きく貢献した戦車でした。

型式は英国戦車としては多く、戦車型だけでMk.Ⅺまで作られて2ポンド砲→6ポンド砲(57mm砲)→75mm砲と強化されています、乗員の数も変化しました。小柄な戦車だけに砲塔は小さく、サスの重量制限から大型化も難しかったのは難点ではありました。とはいえ、改良後もあまり重量が増えなかったおかげで、「小柄で便利な戦車」という利点が消えなくて済んだとも言えます。
他にはビショップ自走砲やアーチャー対戦車自走砲のベースになったり、架橋戦車や浮航戦車になったりと派生型があります。

<キット解説>
タミヤのキットで2017年発売の新しいキットです。キットは品番MM352で、本国のMk.Ⅱとソ軍向けⅣが選択できます。ⅡとⅣはエンジンのメーカーが違うのですが基本的な外観は同じなので、キットでは転輪とサイドスカートと箱が少し違う程度です。
バレンタインの1/35キットはこれまでいくつか出ていて、従来はAFVクラブとブロンコとミニアートのものが出来は良かったのですが、少々作りにくいのと価格がネックでした。この3社は別の金型、けっこう恵まれてますね。
ドラゴンやイースタンエクスプレスやアークモデルは元がVMってとこので基本一緒、出た当時は歓迎されましたがけっこう古いので現在の目で見ると少し厳しいです。こっちはOEMで複数メーカーから出てるので、上記3社以外のキットはこの金型だと思ってOk。

タミヤのは程よい省略による安定した作り易さと上記3社よりは安いのが魅力。既に出来の良いキットがあるとはいえ、英国最多生産戦車なのでタミヤからも出してほしいなーと長年思ってたので喜んで買いました。細部のエッチング等はないですが、逆にそれが利点でもあり作りやすいです。タミヤなので他のタイプが出る見込みが少ないのが欠点か。
細かいこだわりが無いなら迷わずタミヤで、他の型式とか凝った仕様にしたりディオラマにするなら従来の3社から選ぶってことで良いかなと。ミニアートは今後Ⅺ型とかを追加する予定のようです。

キットの中身は、履帯はプラの部分分割式(まっすぐなとこが一体のやつ)、細部の選択部品は特になく、英国Ⅱとソ軍Ⅳでの作りわけのみ。Ⅳだとサイドスカート無しで前後のフェンダー形状が異なります。転輪はそれぞれのものが付属。Ⅳは主にソ軍へ送られた型式です。
砲身はプラ製で先端が別部品。起動輪と主砲はポリキャップはめ込みです。ハッチ類は砲塔上部ハッチのみ開閉選択式、ただ操縦手席も少しいじれば開状態に組むのは可能です。フィギュアはアフリカの英国車長と砲手の半身が付属します、ソ軍は無しです。
デカールは英国1種とソ軍2種、ソ軍はオリーブドラブで1つは番号のみ、もう1つは番号と片側にスローガンです。かなり地味な感じで、特に英国用のデカールはもっと汎用的なのを入れて選べるようにしておいてほしかったので残念。最近のタミヤってこのへんの選択肢が少ないよね。

<作例について>
手軽に作れるのが魅力のキットなのでパパっと作っています。AFVクラブ製を積んでるんですが、タミヤさんグッジョブって事で新キットを買って作りました。スカートを分けておいて足回りを塗って組んでから接着したんですが、普通に組んでしまったほうが良かったかも。色は適当で、履帯はもっ茶色っぽい色が正解っぽいです。塗分けは少ないので簡単なほう、汚しは軽く茶色でスミ流してタミヤのウェザリングスティックを塗って水と筆で伸ばして、ウェザリングマスターで軽く叩いて変化をつけました。新車が届いて慣らし運転してきたぐらいの感じで作りました。
写真は一眼で撮ってますが、蛍光灯でちょっと色が変わってしまっています。あと手抜きして三脚をふかっとした敷物に置いたせいでピンボケ気味です。


日付

2018年6月1日

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