回天神社 in 大分
2014年8月、大分県速見郡日出町にある「回天神社」に行ってきました。別府市の東方の小さな漁村の一角にある神社です。この神社の一帯(旧・大神村)は大戦末期に人間魚雷・回天の訓練の為の大神基地があった場所で、回天搭乗員の戦死者・殉職者の供養のために回天神社が建てられました。ここには神社の他に回天の実物大レプリカがあります。このページでは神社とレプリカについて紹介します。(上写真・神社の境内全景)
尚、このページの情報は2014年8月時点のものです、ページの作成にあたっては神社のある町に在住の友人に協力をしてもらいました。
また大神基地及び回天神社のより詳しい情報はウィキペディアで「大神基地」で検索するとページがあります、ここでは日出町観光協会の作成した資料(PDF)も見られます。
まず交通アクセスについてですが、そもそも場所がイメージしにくいと思います。Googleマップで「回天神社」と打つと茨城などの別の神社が多分出ます(同名の神社は複数あります)。「大分県速見郡日出町大神5673」で検索してください(駐車場の番地)。けっこうな田舎なので、車の場合はナビか地図が無いと迷います、近くまで行くと看板はありますが、山勘ではそこまで近づくのも大変です。電車だとJR日豊本線の日出駅が最寄駅で、そこからはタクシーになります。なお、回天神社は以前はもう少し山側にあって移転されてきたそうなので、古い情報だと場所が違っている可能性があります。
先に実物大レプリカから。神社からは少しだけ離れたところにあり、駐車場もあります。これは日出町の主導で今年(2014年)4月3日に設置されたもので、新しいのでまだ劣化も少なく綺麗な状態でした。説明板によると回天一型の改一という型のレプリカだそうで、一番多かった無印の一型に比べて頭部がとんがっています。レプリカは実物と同様の分割をした外板を溶接してあるようで、かなり丁寧に作られています。自転車と比べると大きさがわかりやすいかと思います、回天は駆逐艦などが積んだ九三式魚雷の駆動系をほぼそのまま転用し、大型化して乗員一名が乗るようにしたもので、見た目の印象は”大きい”というより”長い”で、人間が乗って海中に潜ることを考えると”細い”とも思います。搭乗口以外に人の存在を感じさせない外観は異様なものがあります。
搭乗口の所に踏み台があり、上からも見られます。内部も可能な限り再現されているそうですが、この日はハッチに鍵をしてありました。行事などの際は内部も公開されるみたいです。かなり昔の本ですと「回天のハッチは内部から開けられない」という話もありましたが、実際は内部から開けられます。とはいえ実戦時の脱出は想定されておらず、潜水艦から発進した回天乗員が助かる可能性はありませんでした。回天の特眼鏡(潜望鏡)は短く、波のある中でこれを海面から出して観測することは非常に困難であったといいます。
舵の部分とスクリューです。回天後部の細い部分はほとんど魚雷そのままで、太くなった部分に魚雷が刺さったような構造をしています。回天の乗員には兵学校や予科練など様々な所から志願者が募られた中からも特に成績優秀な方が選ばれたといいますが、その方々が猛訓練をしても尚、回天の操縦は困難であり、直進すら難しく訓練中の事故による殉職者は全戦没搭乗員の2割近くにのぼります。ましてや敵艦に自分自身を命中させるとなれば、その困難さは想像しきれるものではありません。搭乗員の戦没者は出撃・事故・空襲など含めて計106名といわれます(プラモデルの解説書より)。整備員などの死者も含めると更にこの数字は大きくなります。
レプリカのすぐ横には魚雷調整プールの跡があります。今はもうただの防火用貯水池にしか見えません。解説にはかつての施設の所在が細かく書かれています。
道路を挟んで向かいには碑があります。ここは当然ながら海に面しており、養殖場(の跡、廃業したらしい)が目の前にあるのどかな場所です。漁村も小さい方で、とても軍事施設が造られるような場所ではありません。
車で来た場合はレプリカのある土地が駐車場になっていて大型バスも止まれるくらいの広さがあります。回天神社へは徒歩3分+坂道といった感じで、神社は急な坂を少し登ったところにあります。境内にも駐車できますが、スペースが狭く他に車が居た場合困っちゃうので広い駐車場に止めたほうが無難です。ただし、坂は短いですが急なので、お年寄りが行かれる場合は車で登ったほうがよいかもです。右写真が回天神社への坂道にある看板で、神社の由来が書いてあります。
神社への坂の下にある回天の弾頭部分の格納庫跡です。単純に掘っただけの洞穴で、同様な回天格納庫跡が神社とレプリカの間の道路脇にあります。右の看板は坂を登った境内にあるもので、神社の簡単な説明が書いてあります。
奉納されている回天の1/3模型(写真後方)と実物の九三式魚雷の駆動系です。駆動系はこれで全てなのか破損した一部なのかよくわかりませんが、かなり小さく感じます。
奉納品の説明書きもあります。屋外ですが屋根もあり、大事にされています。右写真が回天神社です。ここは住吉神社という神社の中なので、別の一回り大きい社殿がありますが、回天神社の社殿はこちらです。お参りをして帰途に着きました。
回天自体の詳しい説明は本も多数出ていますし、ネットでも多数情報がありますのでここではしません。ここ大神基地(おおが基地)について少し触れておくと、1945年4月に開設された兵員2,000名規模の基地で、回天の訓練基地としては遅くに開設されており、ここで訓練した搭乗員は第一陣が愛媛県宿毛湾に移動し出撃態勢が整った直後に終戦となったため、出撃による戦没者はいません。しかし、空襲による基地兵員の死者複数名と、終戦後の回天搭乗員の自決による死者1名が出たとのことです。
ここは有名な目立った場所ではありませんが、地元の方々により守られてきた神社と戦争遺産です。機会があれば訪れて戦没者の方々を悼む時間を作ってください。
以上、回天神社と実物大レプリカの紹介でした。
回天の1/72プラモデルのページはこちら
1/72 回天一型 ファインモールド